住宅供給公社の特定調停問題について

(平成16年10月4日)

 全国で起こっている住宅供給公社の特定調停問題の共通構造は、道府県の全額出資で設立された住宅供給公社が、公共事業の別働隊の役割を担い、経営陣には、自治体幹部が天下りし、県の監督指導のもと、経営をしてきたことです。
 住宅難の時代は、自治体が安価な住宅を供給する政策は必要であったし、県民にも受け入れられた。しかし住宅産業が生育し、時代が変わってゆく中、的確な対応がされず、地価の値上がりを何度も期待し、土地を買い込んだことが「つけ」となりました。加えて公社会計基準の改正により、債務超過・実勢債務が明らかになった。
 千葉県について言えば、これに「特定優良賃貸住宅の供給促進に関する法律」に伴う 中堅所得者向けの住宅供給政策が積極的に推進され、今日まで、2500戸を越えるに至った。
 バブル以降は、空き部屋の保証・毎年の家賃の定率値上げが、制度上の問題となり、自治体の補助もその意味を問われはじめるなか、毎年約5億円の赤字を生み出すマシンと化したと言っても過言ではありません。
 全国では長崎県で調停中、北海道では調停成立と日本の列島の北に位置する北海道、九州の西に位置する長崎県、ほぼ中央に位置した首都圏の千葉県、位置もさることながら、今後も各地で起こるであろうこの問題の象徴的なケースになるのかもしれません。
1.公社の経営責任と県の監督指導責任について

 この問題は、当時の役職者への責任論が取りざたされやすい傾向がありますが、組織としての県が公社の意志決定にどのように関与し、指導がどこまでの範囲でなされ、政策事業の執行・経営に影響を持ったかという点であります。
 なかには、重要な事業の基本的な部分は、すべて県の所管が決定し、執行・運営だけが公社の仕事であったとする極端な意見もあるが、県の監督指導は、どのようになされたのが、問題です。
 さらに公社の経営責任についても明確にする必要があります。
 知事は、「公社は独立した法人、事業計画・経営方針など経営上重要な事項に関しては、公社の担当部課が立案・経営会議等検討を行った後、理事会の議決を経て理事長の責任のもと決定している」と公社の事業責任・理事長の責任をことさら説明なされました。そして県の指導としては、公社法に基づいて事業計画・資金計画を承認している。結果として今日の事態となったことは「県として遺憾である」と答えられました。
 公社は独立した法人ではありますが、県の全額出資で設立され、最高意思決定機関たる理事会の理事には、県の3人の基幹部長・企業庁長が個人資格ではなく部長・庁長として理事に就任され、理事会に臨んでいるはずです。このことから、経営上重要な事項に関して理事会の議論・審議の中で、当然県の意向に沿って指導していると判断することが、妥当ではないでしょうか。
 さらに住宅供給公社に限らず、他の公社等外郭団体の事業目的は、県政の推進の一翼を担うものです。従って県の方針に沿って事業展開をしているはずであります。
 住宅供給公社の場合は、県の住宅政策に沿って事業展開をしてきたと思います。県の住宅政策上、住宅供給公社の役割は何であったのか、、また県は、政策実現のためどのような基本的な指導・監督をしてきたのかについて明確にすべきです。
 知事は、議会で「公社としてこれらの事態を真摯に受け止め、経営責任になどついて種々の検討をしている」「県として適切に対処するよう指導していきたい」と説明されましたが、まるで他人事のようです。県の指導監督責任と堂本知事としての責任について明確にすべきです。
2.公社の事業計画と弁済計画案について

 公社の弁済のための事業計画は、40年間に分譲事業の処分で204億円、賃貸管理事業で252億円、その他で合計467億円を収入を見込み、40年間の弁済原資とする計画ですが、40年という期間は、不確定要素も含めて予定の予想が立つ期間なのでしょうか、見解を、また、この「事業計画は、裁判所の嘱託調査、不動産鑑定に関する調査を踏まえ修正した。」としていますが、分譲処理判断や経営予測を評価したものではありません。
 今後の分譲事業の処分見通しや、毎年約5億円の赤字を生む特定優良賃貸住宅の契約解除等の対応も大変難しい状況と言え、この事業計画は具体性に欠ける雑ぱくな計画であり、特定調停成立のための数字合わせとしか思えません。具体的にこの先の40年間の事業の実証性について検証が必要です。
 また、県が公社に貸し付ける300億円の起債の形によっては、県の負担も大きく変わってくることから、記載のどのように行われるかも大きな問題です。
3.金融機関との関係について。

 本県の住宅供給公社の特定調停問題が発生して以来、金融機関は9月の始めに「県まちづくり公社」に融資している土地区画整理事業の用地取得費80億円の損失補償を求め、「県土地開発公社」の公共用地先行取得借入金、243億円に債務保証をさらに、「県道路公社」の借入金2億円ついても同様な保証を求めています。
 報道によれば、「県への不信感」のあらわれと解することが出来ます。16年度に予定している起債3035億円のうち、3分2の1967億円が市場公募債であり、来年度も依存が増える中、同じ金融機関のほとんどがシンジケート団を構成していることから、金融環境の悪化からくる影響は大きなものが予測されます。
 金融機関との関係の象徴的な対応と、私どもは分析をしているのですが、特定調停申し立て直後の各金融機関が預かっている公社名義の預貯金の取り扱いついてです。本県の場合は、預貯金を拘束されましたが、長崎県は「相殺」され、北海道は直前に引き下ろし、預金先の金融機関に返済金として弁済したとのことです。
 このことは、特定調停申し立てに際し、金融機関との準備、相互の信頼に対する対応の違いの現れと思いますが、千葉県においては、北海道に比べ特定調停前のコミニュケーション・対応に問題があったとも考えられます。
4.情報公開について

 調停が始まって8回の会議がもたれましたが、北海道・長崎県に比べて情報量が全く少ないと言えます。
 長崎県の特定調停の第3回調停期日において、情報開示を必要性を「県民及び県議会に理解を求めるために」「県議会からも、支援の要否及び支援策等を検討するためには、可能な限りの具体的な情報の開示が必要である旨の指摘が強くなされている」として開示の要請を調停の場できちっとしています。
 さらに特定調停に関するこれまでの協議や調停期日における相手方の意見を資料として成文化し、公表しています。
 北海道の場合では、やはり第3回調停で調停内容の開示について、道は調停開始前に裁判所の許しを受けて発言し、「調停において、損失補償など、道の財政措置に関する協議が行われることを鑑み、広く道民の理解を得、また道議会での議論のため調停での資料を開示したい」と裁判所及び債権者の理解を得たい旨発言し、結果、個人情報を除き、開示を行うことになったとしています。
 調停内容開示によって道の調停案は、基本的方向性である「調停案概案」を示し、第4回で「確定直前調停案」を提出し、その後「確定調停案」を提出した経緯が示され、「調停案」を段階的に進める姿勢も知ることができました。
 さらに預金質権を有する金融機関から裁判所に対して、損失補償に係わる上申書が出された事実と内容、住宅金融公庫から調停に「大口債権者である国及び地方公共団体が調停に参加しない」ということに対する意見書が出されたり、その後の公社と公庫の難しいやり取りについても理解し得る情報の開示があります。
 千葉県も調停の場できちっと発言し、情報の公開・開示ができるよう更なる努力をすべきです。このままでの情報が開示されない状態であれば、どんなに調停が進もうと、県民や議会の理解が得られない結果も予想されます。
5.特定優良賃貸住宅について

 公社の恒常的におおよそ5億円の赤字を生じている特定優良賃貸住宅についてです。
この問題は特定調停に係わる長崎県・北海道では大きな問題となってはいません。
長崎県は全部で25戸のみであり内15戸が空家という状態です。
北海道においては総戸数は867戸であり、そのうち公社が所有するものが380戸であります。従って一括借り上げ分は487戸であります。
 本県の場合はご承知のとおり一括借り上げ分は2473戸であります。国による全国的な施策である特定優良賃貸住宅の問題が顕著に現れ、特定調停の再建の中、対応に苦慮ているのは千葉県だけといえます。
 特定優良賃貸住宅の制度上の基本的な問題点は、5%から3.5%に変わりはしたものの毎年上がる家賃制度があげられます。いくら国・県からの補助があるとはいえ、毎年の値上げは家賃の多寡に係わらず、入居し生活を続けるものとしては納得しずらく、その現れとして、制度開始時から今日までの平均入居期間が、4年1ヶ月と子供を学校に通わせている中堅者家庭にしては、短いと言えましょう。
 いま1つは、空き屋保証が大きな要因であることは周知の通りであります。この赤字の双子をかかえ、オーナー調停も始まるとのことですが、今後赤字を解消することが出来るのか、住宅供給公社の再度の破綻の原因になることも予想されます。
 さらに、住宅政策として、特定優良賃貸住宅の導入に問題はなかったのかということであります。
特定優良賃貸住宅は大別して、補助金をつけ建物を民間で建ててもらい、一括借り上げをし空きや保証までする一括借り上げ方式、同じく補助金を付け民間に建物は建ててもらうが、民間の不動産屋さんと同様に管理だけをする管理受託方式があります。
 本県は何度言いますが、一括借り上げ分2473戸を抱えておりますが、一括借り上げ分でみると、神奈川県は801戸、埼玉県は、48戸、長崎県・北海道の場合は、先に述べましたが、25戸と487戸です。
 この首都圏でも千葉県が突出していると言え、管理受託分では千葉県が111戸ですが、神奈川県が2029戸、埼玉県が6138戸と2県ともリスクの少ない方式を選択しています。
住宅政策として特定優良賃貸住宅の導入に大きな違いがあります。
 本県の場合、住宅政策として特定優良賃貸住宅導入に一括借り上げ分にシフトした理由や、同じ首都圏でなぜこれだけの違いがあることなど、政策上の反省も必要です。